2020.7.9

大切な1日に寄り添って。”ウエディングプランナー”という選択

大切な1日に寄り添って。”ウエディングプランナー”という選択
野々山 佳子

東京都出身。
国立音楽大学器楽科ピアノ専攻卒業。
ピアノ教室の開業を経て、現在はヒルトン東京にて婚礼支配人を務める。

音大生が自身のキャリアを考えるために、音大生自身が音大卒業後のキャリアについてインタビュー。
今回のゲストは国立音楽大学でピアノを学んでいた野々山さん。
音大入学を志したきっかけから、卒業後の進路、ウエディングプランナーの魅力まで、たくさんお話いただきました。

 

 

多様な音楽との関わり方があると学んだ音大生時代

 

 

-音大に進学したきっかけを教えてください。

 

ピアノを習い始めたのは3歳の時で、いわゆる“お稽古”としてスタートしました。

幼稚園に通っていたころから、将来はピアノの先生になりたいという漠然とした夢はあったと思います。

具体的に音大への進学を考え始めたのは、小学校高学年のころ。

その頃は父が転勤族だった影響で浜松に住んでいたんですが、“楽器の町”なので河合楽器やヤマハが主宰するコンクールがたくさんあったんです。

コンクールへ出場するようになってから、「ピアノの先生になるために音大を目指さないといけない」と考え始めたんだと思います。

 

-国立音楽大学ではどのような事を学んでいたんですか。

 

ピアノだと個人で演奏をする機会がどうしても多くなりますよね。

わたしが高校から大学在学中もずっと師事していた先生は、ピアノデュオやコンチェルトなどにも力を入れている方でした。これが本当に楽しかった。

自分のいたコミュニティの中ではピアノが上手だったから、音大に進学するじゃないですか。

でも、大学に入学してみると、周りにピアノが上手な人が山ほどいて。プロの演奏家になんてとてもなれないと思って、入学してしばらくは落ち込みました。
そんな中、色々な演奏スタイルを経験することで“セッション”の楽しさを学んで、「これが音楽のあるべき姿なんだ」と考えるようになったのは、大きな変化でした。

 

有名ホテルでの取材に緊張していましたが、和やかな雰囲気の中お話を伺うことができました。

 

卒業後は“学生時代の経験”をそのまま職業にした

 

 

-大学卒業後すぐにウエディングプランナーになったんですか。

 

在学中には、企業に就職するという意識はぜんぜんありませんでした。

大学2年生の頃から、近所の子どもたちにピアノを教えていたんです。

当時は「女の子のお稽古といえばピアノ」という時代でしたし、いまよりも地域に子どもがたくさんいました。

生徒さんが口コミで増えていったので、卒業後もそのままピアノの先生を職業にしたんです。

 

企業との接点という意味では、大学在学中から結婚するまで、ローランドでデモンストレーターのお仕事をしていました。

銀座の歩行者天国や地方の楽器店などで、電子ピアノのデモ演奏をして、そのまま販売もするんです。

1台販売するごとにインセンティブもいただけるので、学生が手にするお給料としては高額でした。

営業のお仕事を楽しいと思ったのは、これがきっかけだったと思います。

 

-ピアノが弾けて、地方にも行けて、お金まで貰えるなんて最高の仕事ですね!

 

みんなに聴いてもらって、楽しんでもらって。大学での勉強とは違う角度から“音楽”を見ることができる、なかなかいいお仕事でしたよ。
ポップスを演奏していたんですが、自動伴奏機能が付いた電子ピアノなので、コードを押さえると自動でリズムの付いた伴奏になるんですね。

ピアノの経験がない人にも「ほら、こんなに簡単に弾けますよ!」ってアピールして買ってもらうんです。

もちろん、実際にはそんなに簡単に弾けません。(笑)

 

-“THE営業”のお仕事ですね。

 

ウエディングのお仕事も一緒なんですよ。
華やかな世界を夢見てプランナーを志望する方も多いんですが、基本的には営業色の強いお仕事なんです。

結婚式という“商品”を買っていただくこと、衣装やお花やお料理をご提案して売り上げを増やすことが、プランナーのお仕事です。

わたしの所属部署も、営業推進部なんですよ。

 

 

ピアノの先生からウエディングプランナーへの転身。

武器はやっぱり音楽!

 

 

-ウエディングプランナーになったのは、どの様なきっかけなんでしょう。

 

直接のきっかけは、一人息子が高校に入学して、部活でほとんど家に居ない状態になったことでした。

ずっと家に独りになってしまったので、「社会に出てみよう!」と思い立ったんです。

大学を卒業して20年くらいは自宅でピアノ教室を開いていたので、社会に出た経験は無かったんですけどね。
でも、だんだんと少子化で子どもが減っていましたし、お稽古にも英会話だったりバレエだったり色々な選択肢が増えて、ピアノを習う子どもが少なくなっていたので。教室を閉めて違うお仕事を始めるには、いいタイミングだったと思います。

それで、何のお仕事に挑戦しようか考えたんですが。

学生の頃に何度か結婚式でピアノを演奏するお仕事をしたことがあったので、「ウエディングプランナーって素敵じゃない!」なんて、その時は簡単に考えていたんですよね。

 

-未経験からいきなりウエディングプランナーになれるものなんですか。

プランナーになるための基礎知識を、短期のスクールに通って勉強しました。

専門学校のいわゆる“ウエディング科”ではなく、プランナーを育成するためだけのスクールがあるんです。そこで6カ月ほど勉強をしました。

 

-勤務先にヒルトン東京を選ばれたのは、どの様な理由ですか。

 

わたしの通っていたスクールでは、卒業生に就職先の斡旋もしてくれたんですね。

ちょうど卒業するタイミングで、ヒルトン東京で土日と祝日のみ勤務するウエディングのお仕事の求人が、スクールに来ていたんです。
当時のヒルトン東京のウエディングでは、「お料理」と「会場装花」、そして「ジャズの生演奏」の3つをセールスポイントにしていました。

会場で流す音楽を全て生演奏にするプランがあったりもして、とても力を入れていたんですね。
なので、採用担当の方が、わたしの音大出身という経歴に興味をもってくださり、働くことが決まりました。

 

-現在は婚礼支配人をお務めですが、働き始めたときはパートタイムだったんですね!

 どのような経緯で、フルタイムのお仕事に変わったんですか。

 

パートとしてのお仕事は、新規のお客様に「ヒルトン東京で結婚式を挙げるとこんなことができますよ。」という提案をして、契約を結ぶまででした。

ウエディングプランナーのお仕事のうち、入口の最も“営業的”な役割だけを担っていたんです。

その後の、どんな結婚式にするのか一緒に考えて、結婚式当日までサポートしていく役割は、フルタイムの勤務でないと難しいんです。

平日にもたくさんお客様とやり取りをしますし、テーブルクロスや引き出物などの手配のために、業者さんとやり取りも必要です。

せっかくウエディングのお仕事をするのであれば、最後まで新郎新婦に寄り添いたいという思いから、フルタイムでの勤務に切り替えました。

 

 

必要なのは“イメージする力”

 

永遠に続く“時”をイメージして、緩やかなカーブを描くチャペル『ラ・パール』のバージンロード。憧れます。

 

-ウエディングプランナーになるために必要な“資質”はありますか。

 

ウエディングプランナーは「ソフトを売るお仕事」「イメージを売るお仕事」だと思っています。

同じヒルトン東京の営業推進部内でも、一般宴会を担当する部署は、会場の平米数や設備といった「ハードを売るお仕事」と言えると思います。
お客様に、自分の結婚式がどんな風になるのかイメージを膨らませていただく提案をすることで、ヒルトン東京での結婚式を選んでもらう。
ホテル内の会場は披露宴にも一般宴会にも使いますが、同じお部屋を売るにもアプローチが違うんです。

「当ホテルにはこんなプランがあって、お料理代がいくら含まれていて」と事務的な説明だけで終わるプランナーでは、なかなか成約に結び付きません。
例えば、チャペルをご案内するとしても「こんな機能があります」だけではなく、結婚式当日を具体的にイメージできる様な提案ができているプランナーは、成約率が高いんです。

 

-どんな人にウエディングプランナーは向いているんでしょうか。

 

お客様にイメージしていただくためには、当然、プランナー自身にもイメージする力が必要ですよね。

その点、音大生は普段から“楽曲の背景”や“作曲者の考え”についてイメージをする習慣が身に付いていると思うので、プランナーの適性がある人がたくさんいると思いますよ。

 

 

超マルチタスクなウエディングプランナーのお仕事

お仕事中の野々山さん。キャリアウーマンなオーラが漂っています。

 

-ウエディングプランナーの1日のスケジュールを教えてください。

 

わたしが入社した頃は、1人のプランナーが契約から結婚式当日まで全てを担当することが多かったんですが、現在のヒルトン東京のウエディングチームは、プロアクティブチームとリアクティブチームに分かれています。
プロアクティブチームが新規のお客様へのご案内から契約までを担当して、そこから先の打ち合わせや結婚式当日のサポートまでを担当しているのがリアクティブチームです。
これはウエディング業界全体の大きな流れで、同じような分け方をしている結婚式場が圧倒的に多いと思います。

 

-それぞれのチームで、1日のスケジュールも違うってことですね!

 

そうなんです。土日と祝日は見学や打ち合わせでご来館されるお客様が多いので基本的にはみんな出勤、平日はシフト制で週休は2日間という点は、どちらのチームも共通です。
土日と平日では1日のスケジュールも違うんですが、やはり忙しいのは土日ですね。

 

-まずは、プロアクティブチームのお仕事について教えてください。

 

プロアクティブチームでは土日に、新規でご来館いただくお客様を対象にした“ウエディングフェア”を開催しています。
新規のお客様には、会場の見学・プランのご案内をして、どんな結婚式にしたいのかご要望をヒアリングした上で、お見積もり提案しています。

この流れで、1組のお客様にだいたい2時間から2時間半かけて、付きっきりでご案内をしているんですね。
ウエディングフェアの日には、プランナー1人あたり3組のご予約を受けているので、それだけで1日が終わってしまいますよね。

もちろん、ご案内したらお終いではなくて、ご契約いただいた新郎新婦の情報をシステムに入力するお仕事もあります。

 

-リアクティブチームは、どんなお仕事なんですか。

 

こちらも主に土日のスケジュールですが、リアクティブチームは、まず9時30分頃から、その日に結婚式を行う新郎新婦がお支度に入るので、要所ごとに付き添いをしたり、受付に置くグッズをお預かりしてレイアウトをしたり、披露宴会場の準備状況を確認したりしています。
並行して、今後挙式予定の新郎新婦との打ち合わせを入れるんです。多い時では、同じ時間帯に3組の新郎新婦との打ち合わせを同時進行で行っています。
結婚式の打ち合わせって、プランナーと話す時間以外にも、司会者さん・お花屋さん・写真屋さんとそれぞれお話しいただく時間があるんですね。

これらをパズルみたいに組み合わせながら、プランナーは打ち合わせを同時進行しているんです。

 

-想像していた以上に大変なお仕事なんですね。

 

ウエディングプランナーって華やかなイメージのお仕事だと思うんです。

だから、華やかな世界を夢見てプランナーになる方って多いんですけど、実際にはけっこうハードなお仕事なので、大変な思いをしていると思います。
でも、本当に幸せなお仕事なんですよ!

 

 

 

ホテルのプランナーだからこそ問われる“イメージする力”

 

ホテルの中をご案内いただきました。広くて迷いそう。

 

-結婚式場の見学って、皆さん何カ所ぐらい行くものですか。

 

少ない方だと3・4カ所ですかね。中には、20カ所とか30カ所とか見学する方もいらっしゃいます。

その中でヒルトン東京を選んで頂かなくてはいけないので、営業色が強い仕事なんです。

式場選びを始めたばかりのカップルって、最初は自分たちがどんな式を挙げたいのかもわからないものなんですよね。
一口に結婚式場と言っても、いわゆる“専門式場”と呼ばれる結婚式の為だけの施設があって、他にもレストランやゲストハウス、ホテルといった色々なジャンルがあります。

それぞれのジャンルに得意なことも苦手なこともあるので、色々と見学しながら、だんだんと絞り込んでいくんですね。

 

-ホテルの結婚式場としての強みはどんなものなんですか。

 

ホテルウエディングの強みはやっぱり、付帯施設や宿泊施設があることですね。

遠方からの列席者が多いカップルは、会場から宿泊場所への移動がないホテルを選ばれることが多いです。
「じゃあ、ホテルにしましょう」と決めてから、たくさんあるホテルの中からどこか1つを選ぶ訳ですよね。

ヒルトン東京を選んで頂くためには、他のホテルと差別化をしなければいけない。

 

でも、今はどのホテルでも結婚式でできることってそんなに大きく変わらないんです。

お料理はカスタマイズできるし、お花だって自由に選べます。

そうなるとプランナーにできることは、ヒルトン東京で結婚式を挙げるとどんなことができるのか、新郎新婦ができるだけ具体的にイメージができるようにご説明することだけなんです。

 

-ウエディング業界で営業をする大変さがわかってきた気がします。

 

いま首都圏だと50%以上のカップルが、入籍はするけど結婚式をしないというデータもあるんです。
しかも少子化でカップル自体の数も減っています。

少ないカップルのうち結婚式を開く約50%を、何千という数の結婚式場で取り合っている状態なんです。
これはウエディング業界全体の問題ですけど、いまは本当にどの式場も大変だと思います。

 

か、会場に木が生えてます!とんでもないオシャレ空間に驚きです。

 

 

喜びは新郎新婦の大切な1日に寄り添えること!

 

 

-ウエディングプランナーの難しさって何でしょうか。

 

ウエディングのお仕事では、2時間半ほどの結婚式のために高級車1台分くらいのお金を使ってもらう訳です。

しかも、一生に一度のことだから失敗が許されない。
でも、どんなに手を尽くして準備をしていても、アクシデントが発生してしまうことはあります。

そんな時にも、新郎新婦の心の傷にならないようケアをしていくためには、プランナーが2人に寄り添い“信頼”や“繋がり”を築いていくことが、とても大切だと思うんです。
また、結婚式は、新郎新婦がご両親に感謝を伝える場でもあるし、お世話になっている皆さんへの報告の場でもあります。

やはり意義のある場にしなくてはいけないので、そういった意味でもすごくプレッシャーのかかるお仕事です。

 

-お仕事をしていて一番やりがいを感じるのはどんな時ですか。

 

結婚式って、新郎新婦2人の人生にとって本当に大切な1日だと思うんですよね。

長い結婚生活の中では喧嘩をすることだってあるでしょうけど、そんな時に「あの時幸せだったからまあいいか」と思えるような結婚式を作っていく。
そんな大切な1日に新郎新婦に寄り添っていられることが、一番のやりがいだと思っています。

結婚式を迎えた新郎新婦に「ありがとう」と言ってもらえた時には、本当に幸せなお仕事だなと感じるんです。

 

 

今後の展望と後輩たちへのメッセージ

 

-将来はどのようなことにチャレンジしていきたいですか。

 

定年退職も近いので、そう遠くない将来の話になっちゃいますけど。
フルタイムのお仕事は卒業して、もう一度ピアノを練習したいと思っています。
ウエディングプランナーのお仕事を始めてから、全くピアノを弾いていなかったんですね。

自宅には防音室もあるんですが、長いこと蓋も開けていませんでした。
休日にちょっと弾くという選択肢もあったとは思うんですけど、わたしの場合は満足に練習できないことがかえってストレスになってしまって。

それで「今はピアノを触らなくていい時期」と思うことにしたんです。

「退職後には思いっきりピアノを弾くぞ!」と思っていたんですが、最近では新型コロナウイルスの影響で自宅待機になることが増えたので、20年ぶりに練習を始めました。

1日5時間くらい、音大生だった頃と変わらないぐらいの練習をしています。
やっぱり20年ってかなりのブランクで、自分でも本当に不甲斐ないと思う演奏なんですけどね。

でも、学生の頃とは違って、点数を付けられたりすることなく自分の好きなように弾いているので、本当に楽しいんです。

 

チャペルの中で記念撮影。終始楽しく、お話を伺うことができました。

 

-最後に、音大生の皆さんへメッセージをお願いします。

 

毎日を楽しく生きて欲しいと思います。

よく、うちのスタッフにも言っていることなんですが、ウエディングプランナーは幸せな雰囲気を出していないとダメなんです。

お仕事でもプライベートでも、辛いことがあったりすると、どうしても顔に出てしまいます。

でも、暗い顔をしてるプランナーのいる式場で、結婚式をしたいとは思いませんよね。
これってプランナーに限らず、お客様と接点を持つお仕事には共通して言えると思うんです。

「どんな事でも楽しめるか」って、自分の気持ちや考え方に左右されると思うんです。
社会に出れば嫌なことだってあるだろうけど、気持ち次第では、逆境に立ち向かう自分・乗り越える自分を、楽しむこともできるとわたしは思っています。

町田 英美果
神奈川県出身。 6歳からピアノを始める。 東京音楽大学音楽学部音楽学科器楽専攻ピアノ4年在学中。 趣味は、ジムで筋トレ、旅行。
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