栃木県出身。
東京音楽大学音楽学部音楽学科 音楽文化教育専攻 卒業。
大手楽器店の音楽教室にて、受付事務として勤務している。
音大生が自身のキャリアを考えるために、卒業後のキャリアについて音大生ならではの視点でインタビュー。
今回のゲストは東京音楽大学で音楽教育・ヴァイオリンを学んだ北條さん。
音大進学を決意したきっかけから、卒業後の進路の決め方まで、たくさんお話しいただきました。
音楽に没頭できた大学時代はまさに夢の世界
-音大への進学を決めたきっかけを教えてください
小さな頃からずっと音楽をやってきたので、専門的に学んで音楽を極めたいと思い、進学を決めました。
6歳からヴァイオリンを始め、中学校時代は合唱部に、高校時代は学校の部活には入らずに社会人オーケストラに入っていたんです。ずっと音楽に触れながら育ってきたので、自然に大学も音楽大学へと思うようになりました。
-音大では、どのような事を学ばれたんでしょうか
実技の面と勉強の面でそれぞれ学んだことがあります。
まず、実技の面ですが、専攻としてヴァイオリンを、副科でピアノと声楽を勉強しました。他にも、教職課程の一環としてオーケストラを履修するんですが、そこではフルートを勉強しました。
勉強の面では、音楽教育科に所属していたので、音楽教育に関する授業をたくさん履修しました。中でも面白かったのは、“リトミック”の授業ですね。
学生の中で先生役・生徒役を決めて模擬授業をしていくんですが、生徒役になった学生は、4歳とか5歳くらいの子どもになりきるんです。
先生役は順番に回ってくるんですが、当番の学生は、どんなリトミックの授業をするのか事前に考えてきます。タンバリンたたいたりとかリズムに合わせて動いたりといった授業をして、生徒役の学生は子どもになりきってマネする。
20名程の学生が動き回れるくらい大きな教室での授業だったんですが、とてもいい経験でした。
-音大での生活で印象に残っているエピソードはありますか
印象に残ってることは2つあって、1つ目はシンプルに音楽に没頭できたことですね。
学生の時は、練習が辛いなと思っていたんです。でも、社会人になってみて思うのは、大好きな音楽だけをやっていられる時間って、本当に夢の世界だったなと感じています。
発表の場もたくさんありますし、本番に向けて練習をして、達成感だったり楽しさだったりを味わえるのは、音大ならではだと思います。
2つ目は、就職活動を始めてわかったことなんですが、音大生であることが意外とプラスに働いたことです。
もちろん業界や職種にもよるとは思いますが、私が受けた企業では面接官の方のウケが良かったんです。音大生であることで色々と質問をしていただけたので、他の就活生といい意味で差別化できたんじゃないかなと思っています。
「音楽×教育×接客」が私の天職
-現在のお仕事を選ばれた理由を教えてください
私は現在、大手楽器店の音楽教室で受付事務の仕事をしています。
元々は先生になろうと思って、音楽教育科に進学したんです。
でも、大学時代にカフェでアルバイトをしていたんですが、それがすごく楽しくて。そこから「“接客”のお仕事ってすごくいいな」と思うようになりました。
また、教育実習へ行ったことも、大きなきっかけになりました。
教育実習に行っている期間、本当にずっと授業や音楽のことを考えていたんです。それが私にはすごく楽しい時間で、「やっぱり子どもってかわいいな、教えるのっていいな」と思ったんです。
就職活動は大学3年の3月から始めていたので、途中で教育実習を経験したんです。
当初はホテル業界と航空業界に絞って接客のお仕事を探していたんですが、教育実習がきっかけで“音楽”や“教育”に関わるお仕事をしたいと思うようになりました。
そこで、音楽・教育・接客をキーワードにどんなお仕事をするか考えたとき、今の会社を見つけて、「全てそろってるじゃないか!」と思い、このお仕事を選びました。
-学校の先生や音楽教室の講師になることは考えなかったんですか
学校の先生については、すごく迷いました。
ただ、当時の私は、音楽漬けの生活を送っていた事で、自分に“一般常識”みたいなものが足りていないと感じていました。一般企業に就職して社会人としての基礎を身に付けた上で、改めて先生を目指しても遅くはないと考えたんです。
-接客のお仕事の魅力はどんなところだと思いますか
お客様とのコミュニケーションをとおして、笑顔になっていただくことが一番のやりがいだと思います。
例えばなんですけど、カフェでのアルバイトの経験では、お年寄りの方であれば入口に近い席にご案内して、あまり歩かなくてすむようにしていました。ちょっとしたことではあるんですけど、よりお客様に喜んでいただけるよう“おもてなし”をすることが、私は楽しいんです。
音楽教室のお仕事は、お客様におもてなしをする接点もあって、音楽にも教育にも携わることが出来る、私にぴったりなお仕事だと思っています。
-就職活動と学業の両立で苦労をした点はありますか
やっぱり、音大生は企業に就職をする方ばかりではないので、両立は大変ですよね。
私は、専攻のヴァイオリンの先生には、就職活動をすることを伝えていました。幸い先生も応援してくださって、レッスンの中でも「最近どうなの?」と聞いてくれて、理解をしてもらいながらレッスンをしていただけました。
-精神面での負担についてはいかがでしょう
就活をして、教育実習に行って、卒業試験に向けた練習やレッスンがあって、4年生の間は本当に大変ですよね。
私はもう開き直りました。就活では私も、すごくメンタルをやられたんですよ。
志望度の高かった企業に落ちた時などはメンタルがボロボロだったんですけど、そういう時に楽器って癒しになるんですね。「練習しなくちゃ!」って思うんじゃなくて、癒されるために練習するという感じで両立させていました。
とても幅広い音楽教室のお仕事!
-音楽教室の受付事務のお仕事について、くわしく教えてください
受付事務の業務内容は主に3つあって、1つ目が「受付作業」、2つ目が「事務作業」、3つ目が「発表会の運営」です。
受付作業では、生徒さんの入退会の手続きや、レッスンの曜日・時間を変更する手続きを行っています。他にも、新規のお客様にコースの説明や体験レッスンのご案内をするのも受付事務のお仕事です。
2つ目の事務作業では、生徒さんから頂いたお月謝の管理をしたり、募集枠の設定や調整をしてます。
3つ目の発表会の運営については、会場を予約しに行くところから私たちがやっています。
コンサートホールはなかなか予約ができないので、もう本当に色々な会場へ抽選に行くところから始まります。会場が確保出来たらプログラムを作って、発表会当日には舞台のセッティングや受付のお仕事をして、発表会が終わった後には生徒さんから集めた出演料を集計するお仕事もしています。
-転勤の可能性はあるんでしょうか
私が働いている会社は全国の主要都市に教室がありますが、全国転勤はほぼありません。
ただし、同じ都市内の店舗間での異動はあります。東京でいうと、池袋とか新宿とか渋谷とかの間で、勤務する店舗が変わることはありますね。
-同僚に音大出身の方はどのくらいいいますか
音大出身の方が半分程だと思います。他には楽器制作の専門学校出身の方や、一般大学出身で音楽が好きな方など、様々です。
-残業の有無やお休みについても教えてください
土日や祝日も教室は開いていますので、お休みはシフト制です。
ただ、毎週お休みの曜日が変わる訳ではなくて、ずっと月曜日がお休みの人、ずっと金曜日の人といったように、特定の曜日がお休みになる仕組みになっています。それにプラスでお休みしたい日がある場合には、申請してお休みを取れるという感じなので、普通のシフト制ではないです。
-お仕事のやりがいはどんなところでしょう
私はお客さんをよく観察して、その人に合ったご提案をするように心がけています。
保護者の方から、お子さんが先生と合わないなどの相談をされることもあるんです。先生を変えるのはなかなか難しい面もありますが、その子に合った新しい先生を紹介できるようにしています。
ご提案したことで、子どもたちや保護者の方に喜んでいただけた時には、やりがいを感じます。
たくさん悩んで決めたことは後悔しない!
-今後、どのようなキャリアを歩んでいきたいとお考えですか
この仕事を極めたいという思いが強いです。
私らしく笑顔で楽しくお仕事をしながら、生徒さんからも先生方からも同僚からも、頼ってもらえる人材になりたいなと思っています。
音楽とも関わっていけたらいいなと思っているので、ヴァイオリンやピアノの練習も続けていきたいと思います。
-後輩たちへメッセージをお願いします
卒業後の進路を決める時期は、現役の音大生にも悩んでいる方がたくさんいると思うんです。私もたくさん悩みました。
でも、たくさん悩んで自分で出した答えであれば、どんな選択をしても絶対後悔しないと思うんです。
就職するにしても、しないにしても。自己分析をしながら自分を見つめなおして、自分が本当はどうしたいのかをよく考えて、決断をして欲しいと思います。