2020.8.1

相手の困りごとを解決する!私が”営業”を選んだ理由

相手の困りごとを解決する!私が”営業”を選んだ理由
日比野 嗣美
神奈川県出身。
東京音楽大学音楽学部音楽学科音楽教育専攻卒業。
現在は有線放送事業の企業にて営業を担当。
趣味は旅行、映画鑑賞。

 

音大生が自身のキャリアを考えるために、音大生自身が音大卒業後のキャリアについてインタビュー。今回のゲストは東京音楽大学でトランペットを学んでいた日比野さん。音大に入ったきっかけから卒業後の進路の決め方や営業のやりがいまで、じっくり聞かせていただきました。

 

 

音楽以外にも様々なことに挑戦した大学時代

 

 

―はじめに、日比野さんが音楽大学に入学したきっかけを教えてください。

 

中学生の頃から吹奏楽部でトランペットを演奏していました。

最初にトランペットにのめり込むようになったきっかけは姉の存在でした。1コ年上の姉もトランペットを吹いていたのですが、その姉に負けないぞという気持ちで自然とたくさん練習をするようになっていたんです。私、かなり負けず嫌いな性格なので(笑)

その気持ちがさらに高まったのは、トランペット奏者の高橋敦さんの影響です。ある時、部活のコーチから「誰かを目標にしてその人を目指すともっと上手くなるよ」と言われて、誰を目標にしようかとたまたま楽器店で手に取った高橋敦さんのCDにもうびっくり。トランペットってこんな柔らかく優しい音でが出るんだ!自分もこんな音を出せるようになりたい!もっと上手くなってトランペットソロにも挑戦したい!と思うようになって、音大に行こうと決心しました。

 

 

丸の内のカフェや屋外でお話させていただきました。

 

 

―音楽教育を専攻されたのはどのような気持ちからだったのですか?

 

当初は音楽教育を専攻するつもりは無かったんです。最初はトランペット科を受験したのですが、残念ながら不合格だったんです。でもその後で音楽教育専攻はどう?面接受けてみない?とお誘いを頂いて、そこで拾ってもらったんです。

結果的には音楽教育専攻でとても良かったと思っています。

 

―音楽教育専攻が良かったというのはどのような点でしょうか?

 

昔から子どもが好きで、小さい頃の夢は学校の先生だったんです。なので教育にはもともと興味がありました。

それ以上に良かったのは、非常に刺激が多い環境だったことです。

トランペット専攻はプロ奏者を目指すのが当たり前という世界ですが、音楽教育専攻だと音楽の仕事だけでなく先生や一般就職など進路の幅が広いんです。なので音大にいながら一般大学の友達とも接しているような感覚でした。

また、そんな環境だからこそ、音楽をしながら他のことをしているという友達も多くて、周りのそんな姿にすごく刺激を受けていました。

 

 

そんな大好きな大学の友達との1ショット。楽しそう。

 

 

―バイトもしていましたか?

 

周りに比べるとたくさんしていた方だと思います。パン屋さん・焼肉屋さん・カフェなどでのお仕事や、高校の吹奏楽部でトレーナーとしての指導もしていました。

 

―サービス業でのバイトが多かったのですね。

 

振り返ってみると確かにそうですね。

「目の前の人を幸せにする」っていうのが自分の軸の一つなんです。なので自ずとサービス業に目が行ったのかもしれません。

 

―日比野さんの「人に幸せを届ける」という軸はどのような背景からくるものなのでしょうか?

 

これは音楽で育まれた気持ちですね。トランペットを吹くと家族が喜んでくれる、というのが自分の原体験になっています。私が演奏するという時には家族が必ず聴きにきてくれました。学内オーディションに通った時も本当に喜んでくれて。

だからこそ、目の前の人が喜んでくれる姿を見たくて、ボランティア演奏にも取り組んでいました。

 

 

”人に幸せを届ける”を軸にした就職活動

 

 

人に幸せを届ける、日比野さんの幸せそう、かつあたたかな人柄。

 

 

―卒業後の進路を決めたのはいつ頃でしたか?

 

大学3年生の時に一般就職することを決めました。

周りを見ると親のすねをかじって生活している人たちが多く、それに対する違和感から自分はしっかり自立して生活してみたいという気持ちが強くなったこと。それとライブなどイベント開催にも興味が出てきたので、そういった仕事に携わってみたいという気持ちが芽生えたのが理由です。

 

―音大だと就職活動をすると白い目で見られることもあるかと思うのですが、それはいかがでしたか?

 

そういう雰囲気はありますよね(汗)

就活しているから練習してないとは思われたくなかったのもあって、大学にいる間は就活のことは一切匂わせずに今まで以上にしっかり練習して、大学を離れたら就職活動に専念するようにしていました。なのでトランペット科の友達には、一般就職したことは知られてないんじゃないかと。

ただ今振り返ると、決して恥ずかしいことをしているわけではないので、もっと堂々としてても良かったのかなと思います。

 

―先生になる道は考えなかったのですか?

 

私はそんなに勉強の成績が良いわけじゃないし、すごい世間知らずだなという自覚もあったので、こんな自分が子供たちを教えて導いていく姿がイメージできなかったんです。もっと世の中のことを知らなきゃという気持ちが、企業への就職を後押しした面もあります。

 

―就職活動を進める上で困ったことはありませんでしたか?

 

困ったこともありましたが、私は音楽教育専攻で一般就職する友人もいたので色々と相談できたのが救いになりました。ただ、トランペット科の人が一般就職するとなったら、相談相手が全くいなくて行き詰まっちゃうんじゃないかと思います。

 

―進む業界や会社を決めるのはどのようなプロセスで進めましたか?

 

大学3年生の夏頃から就活関連のイベントに参加して、冬くらいには進みたい業界がある程度固まっていました。

当初から「人に幸せを届ける」という軸を持って業界研究をしていたので、ブライダル業界なども候補として考えていましたね。

 

―その上で今の会社に決めた理由は何だったのですか?

 

後押しになったのはやはり音楽に関わる仕事ということでした。また、会社説明会など選考プロセスで出会う人が、音楽が大好きな人が多かったというのも心強かったです。

三次面接まで進んだ際に、採用合否には関係なく先輩社員の方とカフェでお話しできるという機会があったんです。そこでありのままを話してもらえたのもとても好印象でした。

 

 

編集部員も就職活動中。質問が途切れる事はありませんでした。

 

 

―ありのままというと例えばどんな?

 

仕事のやりがいや楽しい面ももちろん聞くんですが、マイナス面もきちんと話してくれたんです。やってみるとこういうところが大変だよとか、新卒採用を始めてまだ数年目だから年が離れた人が多くて考え方の違いに苦労するかも、とか。

 

―就職活動ではどんなことをアピールしましたか?

 

自主的に取り組んでいたボランティア演奏のことをかなり強くアピールしました。演奏のことはもちろん、限られた時間の中でどうやってお客様を楽しませるかを一生懸命考える準備の話なども交えて。

本来は人のためのボランティア活動だけど、それを通じて自分の方が得られているものが多い、といった話は面接官の反応も良かったように思います。

 

 

営業は”会話を重ねて相手の困りごとを見つけていく”こと

 

 

―現在のお仕事の内容を教えてください。

 

有線放送事業を扱う会社で営業を担当しています。

お店のBGMなどで流して頂く有線放送がメイン商材なのですが、その他にレジやWi-Fiや防犯カメラなど、お店の開業に必要なものは一通り用意することができます。電気やガスも扱っているので、お店を開業したいなら一括でお任せください、と言えるんです。

営業の仕事スタイルは、電話をかけまくってアポを取る人や、実際にお店に飛び込みで訪問する人など、人によって様々です。私は飛び込みでの案件獲得が得意なタイプです。

 

―営業の仕事でハードなイメージですが、辛いと思うことはありませんか?

 

営業なので毎月目標の売上があったりとか、ちょっとしんどいと思う場面はありますが、想像していたほどじゃないな、というのが率直な感想です。

それよりもお客様とコミュニケーションを取っていけるのが楽しいですね。「日比野さんが勧めてくれたから買うことにしたよ」なんて言ってもらえるのは本当に嬉しいんですよ。

 

 

音大生は営業に向いてますよ!という日比野さん。終始笑顔でポジティブなお言葉ありがたいです。

 

―辛さより楽しさが上回ってる、っていうのはすごいですね。

 

たぶん音大生って営業職に向いてると思うんです。とにかく忍耐力がすごい。音大生って、それこそ365日音楽と向き合っていて、みんな孤独で辛い時間を重ねてきているので。そんな経験をしている一般大学の学生はなかなかいません。

あと礼儀正しい女性に対して、冷たい態度を取るお客様はほとんどいないです。

 

―日比野さんの仕事の進め方をもう少し詳しく教えていただけませんか?

 

飛び込みでお店に行って、音楽がかかってればお店の人に聞くんです。「これ、○○の会社のですか?」って。

もしスマホで音楽を流しているようだったら、あれは法的にはアウトなので、「最近著作権とか厳しいですよね」という話から店舗向け音楽配信サービスの紹介をします。

 

―他社の配信サービスを使っていたらそれをひっくり返しにかかったり?

 

いえ、私はそういった押し売りはしなくて、相手の困りごとを見つけてそれに応じた提案をすることを心がけています。その方がお互いのためになると思うので。

 

―例えばどのような?

 

さっきもお話したように、私の会社の扱うものは音楽以外にも様々な店舗関連サービスがあるので、音楽は足りてそうだと思ったら「最近お金の受け渡しでのとらぶるとか増えてますけど、レジでのトラブルとか無いですか?」って聞いて、もしトラブルがあったらレジ上につける防犯カメラを提案するとか。会話でどんどん攻めていきます。

 

―すごい!日比野さんの営業テクニックの片鱗を見た気がします。逆に仕事で苦労しているところはどんなところですか?

 

私、ちょっと抜けてるところがあって、ちょっとしたミスがちらほらあるんです(汗)

メールに「いつもお世話になっております」と書くべきところが「いつもお世話になっておりません」ってなってたりとか。すぐにお詫びのメール打って、今はまだ若いから仕方ないか、みたいに大目に見てもらえていると思うんですが、いつかものすごい大きなミスをするんじゃないかと心配です。

 

 

営業にやりがいを感じるポジティブな日比野さんのトークに爆笑な一同。

 

 

―会社の雰囲気はいかがですか?

 

新しいことにどんどん挑戦する会社ですね。例えば勤務時間も結構自由。1ヶ月にこれだけやりなさい、というのは決まってるんですが、時間配分は各自に任されていたり。なので私も営業という仕事でありながら、自分の都合で有給休暇を取らせてもらったりしています。

あとはフリーアドレスで座るところは自由。オフィスも綺麗で観葉植物も多かったり、居心地の良い環境を用意してもらっていると感じます。

 

―時間の融通が利きやすいというのは良いですね。

 

上司もすごく理解があって、私なんかは細かく指示を出されるのが嫌なタイプなので、それを分かって適度に放っておいてくれます。部下のタイプによって対応を変えてくれるのも、働きやすいと感じるポイントですね。上司や同僚とのコミュニケーションの機会も結構多いです。

 

 

今後の展望と後輩たちへのメッセージ

 

 

―日比野さんの今後の目標を教えてください。

 

今の仕事でもっと良い成果をあげたいというのはもちろんのこと、就職活動のきっかけになったライブイベントに関わる活動にも携わってみたいし、細く長く続けている子どもと関わる活動もより深めてみたい。プライベートでは大好きな旅行にもっとたくさん出かけたいし、家族との時間も大切にしたいですね。

やりたいことが山ほどあるので、1つずつゆっくり叶えていけたらと思っています。

 

 

音大生のためのメディアということで楽器を持ってきていただきました。楽器持つと自然に笑顔に。

 

 

―最後に、これから進路を考える音大生に向けてのメッセージをお願いします。

 

自分の気持ちに正直に、大学生のうちに音楽以外にもやりたいことにも挑戦して、色々な経験を積むのが良いと思います。

また就職を目指すとなった場合には、一般的には音大生は就活に不向きと思われがちです。でも私は音大生であることは、就職活動においてプラスになることのほうが多いと思います。大学で積み重ねたことや音大生だということに自信を持って欲しいです。

伊藤 菜実
広島県出身。 東京音楽大学音楽学部音楽学科器楽専攻トランペット3年在学中。 3歳から音楽教室に通い、ピアノとエレクトーンを始める。 12歳で吹奏楽部に入り、トランペットを始める。 趣味は映画鑑賞、オペラ鑑賞、野球観戦。
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