2022.9.7

音大卒って、素晴らしい!音楽 ✕ 〇〇 の可能性は無限大

音大卒って、素晴らしい!音楽 ✕ 〇〇 の可能性は無限大
小熊 芙美子 OGUMA Fumiko

埼玉県川越市出身。
桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)、桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業。
現在は、株式会社リブランマインドにて、楽器演奏ができる防音の賃貸マンションシリーズ「ミュージション」の営業を担当。
プライベートでは、桐朋学園の同級生などと組んでいるピアノ五重奏「Bella Piano quintet」にて、演奏活動を続けているほか、地元 埼玉県川越市にストリートピアノを誘致する団体「人まちピアノ」の理事として、活動を行っている。

音大生が自身のキャリアを考えるために、音大生自身が音大卒業後のキャリアについてインタビュー。
今回のゲストは桐朋学園大学を卒業し、現在、株式会社リブランマインド
で営業のお仕事をされている小熊芙美子さん。音大卒というアイデンティティを活かしながら、仕事もプライベートも懸命に取り組まれている姿を取材しました。

 

幼少期から音楽とともに過ごす日々


ーまず幼少期からお聞きしたいのですが、小さい頃はどのように音楽と関わってきたのか
をお聞きしてもいいですか?


私は 4 歳からピアノを始めました
きっかけは、両親
ともに音大出身で、音楽が大好きだった事です。
実は、
渡邊さん(本日のインタビュアー)が在籍されている東京音大と特にご縁が深いんです


ーえ!そうなんですか!


はい。父・母・兄が東京音大出身で、父がフルート、母がクラリネット、兄が声楽した。また、父は現在東京音大で教壇に立っていますそんな背景があって、小さい頃から当たり前に生活の中に音楽があり、家の中ではいつも誰かの楽器の音が鳴っていましたね。


ーご実家では防音室を使われていた訳ではなく、自由に吹けていたのですか?

 

はい、防音室ではありませんでしたが、近所の方のご理解ご協力があり時間を決めて練習させていただいていました。


ー小熊さんはご家族のようにピアノ以外に他の楽器はやられていたんですか?


いえ、私はピアノだけをやっていました。


ーそうだったんですね。幼少期からピアノや音楽のある環境で過ごしてきて、高校からは桐
朋学園に入られたんですよね!


はい。小学校 45 年生くらいに音楽高校の受験を決めて、聴音の勉強を大急ぎでやっていました。どうして音楽の道を目指したかという明確な理由はなく、小さい頃からピアノを始めて、目の前の課題をただただ必死に取り組む中で、自分を成長させたいとかやり切りたいっていう気持ちだけで猪突猛進し、高校、大学恩師に導いていただきました。


音楽は人とのコミュニケーションツール


ー音大に入ってから学んできた中で、印象に残っていることや良かったなと思う事はあり
ますか?

 

私は伴奏とかアンサンブルをするのがすごく大好きでした。
音高に入る前までは個人のレッスンだけを受けてきたので、アンサンブルをやったことが殆どなかったんですね。音高に入ってから色んな楽器の子に出会えて弦楽器管楽器とトリオを組んでみたり
友達と意見を出し合いながら音楽を作っていく過程、レッスン、本番での演奏経験など、
ンサンブルがとにかく楽しかったです。

あとは、海外で受けた講習会も非常に大きな経験となりました。
音楽って国境関係ないじゃないですか。

イタリア講習会行ったときに、イタリア、ベルギーやスペイン人の友達が出来て、言葉以外に「音楽」という共通言語を持っていることがすごく素晴らしいことだなと思ったんです。アンサンブルを通してコミュニケーションを取る経験ができたことは、言葉を超越して意思疎通し分かりあえた気がして、ごく印象に残っています。

学生時代の友達は本当に宝物で、今でも海外の子と連絡を取り続けていたり、同級生とコンサートを開いたりしていて、音楽を一緒にできる友達がいることは本当に貴重だなと思っています。また、これは社会に出てから知った事ですが、小さい頃から一貫して何かを継続している人って意外と珍しくて。当たり前のことではないんだなと、ふと思ったりしますね。


ー音大にいると、これしかないというか他に何もできない、
と思ってしまう場合もあるんですけど、一つの事をやり続けたことは社会に出た時にやっぱり力になっているものなんですかね。


そうなんですよ、ここまで自分のアイデンティティをはっきり持っている人種っていない
と思ってます。
例えば
私は大学の時に成績優秀者のコンサートに一回も出たことがないし、世の中には優秀な人がいっぱいいて、ピアノだけでは食べていけないことは分かっていて
でも社会に出ると、
単に技術や成績だけじゃなくて、様々なかたちで自分の強みを活かして活躍している人がいっぱい居るんです音大に行っていなくても音楽業界で活躍している人はたくさん居ますし、学校の成績とか関係なく音楽で培ってきた全ての経験を、わたしの個性として、胸張って言っていいんだなって後になってから知りました


ー今その言葉がすごく刺さります。音大を出た後に自分は何を持っているんだろうって考
えてしまうこともあったので..

 

常に前向きな小熊さん、明るく和やかな雰囲気でお話しくださいました。


会社員として自分の得意を生かす働き方


私は大学を卒業してから 3 年間はフリーランスでピアノを教えたり、演奏の仕事をしていました。ただ、仕事の保障もないですし、収入も不安定で一人暮らしもしてみたいけど、このままだと自立できないかもしれないという気持ちが芽生えて。
2
5 歳のときに、5 年後、30 歳になったときに、どんな生活がしたいかな・・等と考え、一度正社員という働き方をんでみようと決意しました。「音楽 正社員」とかで検索していたら、たまた今の仕事の求人が引っ掛かりました。

新しく覚えなければいけない事多かったので、最初のうちはくたびれて、帰ってきたらバタンキューっていう感じだったんですけど、だんだん慣れてきて色々掴めてきましたね。
私はアルバイトもしたことがなく
会社に勤める経験が初めてだったので、最初は体力的にも大変だったけど、割とこういうものなんだと思って気にせずやっていました。

ーという事はミュージションだけしか受けてないって事ですか?

そうですね、ミュージションしか受けていないです

タイミング的にも求人をはしごして受けるような時期でもなかったのと、
とりあえず一社に応募してみて結果を見てまた考えようって気軽に受けた感じでした。

ーそうだったんですね!

ですから、まさか6年も続くとは思っていなくて…

一度挑戦してみて、もしどうしても続けられないと感じたら、無理せずまた新しい選択をしても良いかなぐらいに思っていたんです。
一度も行動せずに想像しているだけより、先ずは自分で試してみようかなと思いました。

 

実際に働かれている会社に訪問させていただきました!


何事も率先して行動あるのみ!

 

ーでは仕事と演奏の両立という面で、今はピアノにどれくらい触れられているのですか?具体的に 1 日の流れをお聞きしてもいいですか?

私は
火曜、水曜が定休日で、木曜〜月曜の 5 日で勤務しています。
日中は資料作成やお
客様との面談、物件の内覧などを行っていて、帰宅したら2 時間ぐらいピアノを弾いて就寝までは資格勉強したりしています。

比較的
自分でスケジュールを調整しやすいので、コンサート前は有給を使ったり自分の時間をしっかり確保して、演奏との両立させていただいています。

ーそうなんですね、不動産って聞くと結構忙しいイメージがありまして

忙しい時期は残業をすることもちろんゼロではないですが、仕事終わりのプライベートの時間は確保しています。

ーでは演奏会も平日にやられることが多いんですか?

 

そうですね
友人相談し、私の仕事休みの火曜か水曜に実施させていただく事が多いす。
会社に入った当初も
自主企画のコンサートをシリーズでやっていたんです。でも、最初のうちは体力が持たなくて、仕事の後に納得がいくまで練習をするという事が出来なかったんです。気持ち的には、会社に入る前と同じテンションでピアノ取り組みたいけど自分のキャパが足りなくて、満足にやりきれない。それがもどかしかったですね。
ただ、入社して
3 年ぐらい経ってからは、仕事も、仕事以外のピアノの時間も、全力で楽しめるようになってきました。体が慣れて、時間の配分も出来るようになってきたんだと思います。

いまは
演奏活動のほか、地元(埼玉県川越市)ストリートピアノを誘致する活動もやっいます。
「人まちピアノ」という団体の理事をやっているのですが、それも今の仕事で出会った方にお誘いいただき、立ち上げから参加しているものなんです
ストリートピアノの活動では、会社にプレゼンして、会社にスポンサーになってらいました。
仕事と、仕事ではない活動が会社の外で繋がって、最終的に仕事に還元出来るようになり、その地域とのつながりに会社評価を得て、優秀社員賞を受賞すること出来ました。
まさか受賞できると思っていなかったので、その時は嬉しかったですね。

また
来週2022 5 取材時主催ピアノ五重奏コンサート会社のお客様が聴きに来てくださる予定なんです。会社の仕事通して、一人の営業マンとして私のファンになっていただけているのかなと思うと、私がやらなきゃいけない事、私に出来る事、私がやりたい事が、少しずつ重なってきているのかなと、自分の自信に繋がります。

ー音楽に対する理解もあって暖かい職場ですね!
小熊さんが会社の中で社外とのつながりっていうのを率先してやられていたからこそですよね。

ありがとうございます。

社内
にも感謝していますし、社外にも人脈の幅が広がることがとても楽しいです。お客様やイベント協賛などで携わる方の中には、広い意味で音楽関係の方も多くて。例えば一口に「演奏家」と言っても、これまで接点がなかったジャンルや楽器の方とお知り合いになれたり、奏家の方以外でも、作編曲家、ライブハウスの運営、 コーディングエンジニアや音響、プロデューサーの方、マネジメント会社や出版社の方とか。
あとは
かなりコアなアマチュアの方とか、今まで出会ったことのなかったような色んな視点から音楽を見てる方に出会えというのが今仕事をしていて楽しいポイントでもあります。

その中でも
私は弾く専門なんですじゃないですけど(笑)
私はこうなんだって
自分バックグラウンドを、会社員になってからも胸張って言えるも嬉しくて、色々な方法で知り合いを作りながら外の世界との接点を持つ方法を模索しています。

ー会社に入ったことで
また音楽を通して広い繋がりもできたんですね。


そうですね。
これまでは音楽のほんの一部分に関わる人の事しか知らなっただと、思い知らされました。音楽業界についても初めて知ることばかりで、不動産業界に就職したのに、日々音楽の知識も増えていっていますね。

 

ピアノと小熊さんの一枚


掛け算の組み合わせを増やせるようになりたい


ー小熊さん自身の
今後のビジョンを教えてください。

私は自分の得意なこと仕事の掛け算をもっと増やしていきたいなと思っています。
それがもしピアノ×◯◯
じゃなかったとしても、なにか仕事の中でやっていったことが、最終的に一番自分が繋げたい事に繋がるかもしれないし。自分がやりたいことやらなきゃいけないことできることその掛け合わされるポイントもっとこれからも増やしていきたいなと思います。

入社当初、「不動産業界」と、「地元でのストリートピアノ誘致の活動」が結び付くだなんて、
思ってもいなかった。入社当初は仕事で疲れて、日々出勤するだけでも大変だったけど、続していくうちに自分のペースが形成されていって、そこに「やりたいこと」を上乗せ出来るようになってきました。
これからも是非、「できること」を増やして、自分と自社商品の市場価値を高めていきたい
と思います。

あとは、
これからも変わらずに、ずっとピアノを弾いていたいと思っています。

ー幼少期から音楽に関わってきた生活の中で、全く違う業種の仕事になってもまだ音楽を
続けられてるというのは、本当に小熊さんの根っこの部分に音楽がずっとある様な感じがして
私たちの周りの音大生の中では小熊さんのようなライフプランが結構理想的なんじゃない
かなと感じることが多くありました。もっと楽に考えていいんだよじゃないけど、自分に訪れたものの流れに逆らわないでなんでもチャレンジしてみることで結果全て今に繋がっているなと感じました。

ありがとうございます。
自分が知らない世界の事でも、あまり深刻にならずに、真剣に続けてみると、案外面白くな
るのではと感じています。

ー最後に今の音大生に向けてアドバイスやメッセージを頂けますか。

はい。
今仰ってくださったように、音大生はすごく真面目な人が多いから、将来について考えると悪い意味で「私には音楽以外に何がある?」って、明るい気持ちになれないという人もいるかもしれませですが、やってみないと分かりませんのでぜひ柔軟に、いろんな事にチャレンジしてみていただきたいと思っています。

私自身、
学生時代は、「こんなに優秀な人がたくさんいる中で、私の特技はピアノですだなんて、そんなおこがましい事を言って良いの?」なんて思ったこともありました。
でもそんな私でも、社会に出たら違
いました。
もっと広い世界に出たら
音楽に全然ご縁がなかった人や生演奏を聴いたことない人も本当に多くて。
その中で
音大に通っていた人達というのは確固たるアイデンティティを持っている、素晴らしいことを持っていると胸張っていいんだと、社会に出てから知りました

音楽
仕事どう生かすか生かさないか関わらずすでにアイデンティティ持っていということが、貴重で、すでに素敵なことだったのです。

そして、これから
色々な選択肢がある中で一旦会社員を選んだとしても、音楽はどんな形でもずっと続けられるものです。音楽じゃないことに携わることで自分の世界を広げられて、ますますいい音楽になったり、自分に還元できるところもあります。


是非
今までされてきたこと、積み重ねていらっしゃったことを大切にしながら、日々のやりがいを見つけていただければなと思っております
音大卒って、素晴らしい!

 

撮影:山吹 泰男
渡邊 礼葉 WATANABE Ayaha
神奈川県出身。東京音楽大学音楽学部音楽学科器楽専攻(トランペット)4年在学中。 11歳からトランペットを始める。趣味は芸術鑑賞、美食探究。
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